第9話
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「……まさか、本当に『在処』を言ったの?!」
「あ、ああ。でもっ……、まさかそうなるとは思わなくてっ……!!」
レイジンは明らかに動揺していた。それはレンにも見てわかる。
「あんた。あれがどれほどの効果をもつかくらい知っているでしょう? 『仮初の世界』を世界として体現させるための最後の砦なのよ?」
「ああ。わかっている。わかっている、だがな」
「ああ言われてはどうしようもないだろう……!!」
「?」
ルカはレイジンの話を聞いて、なんとなく違和感を感じた。
そして、
「あいつ……ミクは開口一番何と言ったと思う? …」
「……何を、言った?」
ルカではなく、レンが尋ねた。
「驚くなよ……」
「もったいぶるな。いいからさっさと」
「ああ」
そして、レイジンは息を整え、言った。
「……あいつは、『私は始まりの人間。ムーンリット』と、いったんだ」
***
「ムーンリット?! まさか……この世界を創ったとされる全知全能の神が?!」
「あぁ……。驚くだろう? ルカ」
「当たり前でしょう?! 誰だってあの名前を口にすれば驚くに決まってるわ!!」
「……あ、あのー。話が見えないんだけど?」
「レン、あんただって王家の端くれなら知っているでしょ? 『ムーンリット・アート』様のことを?」
ムーンリット・アート。
……たしかこの世界を造りあげた存在、いや概念? だったと思う。
けど、その人が何?
「……ったく、頭の回転が遅いわね。いい? 一回しか言わないわよ?」
ルカが一回息を吸って、息を整えて言った。
「……つまり、ミク姉さんは、その『カミサマ』の名前を言って『世界の理』を記している書物の在処を知りに来た……ってことよ」
つづく。