第10話

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 世界の理とは何なんだろうか。

 レンはそれについて詳しいことを聞いたことがない。リンもそれを知りたくて、図書館の古い書物をあたったりしていたが、それでも解らなかった。

「……それは人間視点から見たカミサマ……ムーンリット・アートについて書かれたものだとされている」

「されている、ってどういうこと?」

「ムーンリット・アートは始まりの人間であって、世界をリセットする権限を持っている」

 リセットする権限。

 世界をリセットするとはどういうことだろうか。果たして名前のままとは思えない。

「今の世界がどれくらいリセットされているのか、果たしてリセットされているかも解らない。黒い箱状の何かを用いてリセットを行っているとかいないとか」

 いないのかよ!

 思わずレンは突っ込んでいた。

 だが……それでも気になってしまうものだ。

 ミクは本物なのか?

「……偽物、としか考えられない」

 ルカがまるでレンの考えている言葉を解っているように答えた。

「偽物だとしたら、誰が入っているの?」

「それが解ったら苦労しない」

「ですよねー」

「ひとまず考えなくちゃいけない」

「あー。ちょっといいか?」

 レイジンが二人の会話に入る。

「俺の考えだが……やっぱり本物なんじゃねえか?」

「ミク姉さんが……カミサマ、だと?」

「あぁ、そうじゃなきゃ会話のあれが成り立たねえ」

 レイジンは頭を掻きながら、呟く。

「ムーンリット・アートとやらは月の女神……だって言われているがそれは何故か、解るか?」

 レイジンの言葉に誰も頷くことはなかった。

「……かぐや姫」

「は?」

「かぐや姫だよ。あれの最後は月へ帰るだろ。あれはなんでかって言うと、月で悪さをしたから地球に来たって訳だよ」

「へえ……それで?」

「つまり……『月の女神』を冠するムーンリットは、かぐや姫であるということだ」




 ◇◇◇






 そのころ。

「初音――なんでここに?」

「そのセリフ、そっくりそのままあなたに返すわ」

 神威と初音は、城の廊下で対面していた。

「なんだかとてつもなく長い時間だった気がするわ」

「一年くらいかな?」

「――そんなことはどうでもいいわ。出しなさい」

「……なにを?」

 神威はにやにやと笑って、答えた。

「白を切るつもりかしら。……まあいいわ。教えてアゲル」

 初音は歯を見せるほどの笑顔を見せて、言った。

「――世界の卵。リアリストのあなたなら知ってるはずでしょう、現実のこと全てを知っているのだから。……それを寄越しなさい」



つづく。