第五話

<< 第四話 剣と契約 |ここです| 第六話 集合と決戦 >>

 

 砂漠を、とある人間が歩いていた。

 

それは砂漠の炎天下には釣り合わない青いマフラーを首に巻いた青い髪の青年だった。

 

「……暑い」

 

“それはそうでしょう。そんなマフラーをしているのですから”

 

 彼の隣には、これまた水色のワンピースを着た女の子が歩いていた。

 

 しかし、彼女は涼しげだ。

 

「しかし涼しそうだね。その『水』の力を分けて欲しいよ」

 

“水浸しでよければ能力を行使しますが?”

 

「……いい。蒸し暑くなりそうだ」

 

“そうですか?”

 

 涼しげに、かつ寂しそうに返した。

 

「……まったく。ほんとうにアキューアは涼しそうだね。さすがは水のサーヴァントだね」

 

“カイトもこの暑さでマフラーをまいていられる精神がおかしいと思いますよ?”

 

 カイトとアキューアは、それぞれ皮肉を言い合っていた。

 

“おや? カイト。街が見えてきましたよ?”

 

「ほんとうだ。オアシスかな。あわよくば休ませてもらおうかな。アイスもあればいいなあ」

 

“こんなオアシスにアイスなんてあるわけありませんよ”

 

 

 

 

 ふたりは、町にたどり着いた。

 

「荒れた町だ。とてもオアシスには見えないね」

 

“水が涸れているようですね。だから人も土地も潤ってないのでしょう”

 

「なるほど。これじゃあアイスも食べれそうにないね」

 

“まずは休みましょう。私の水も供給しておきたいですが……。この際仕方ありません”

 

 アキューアは、眠たそうな目で言った。

 

「アキューア。眠いのか?」

 

“……いえ。私は眠くなんてありませんよ”

 

「嘘付け。どうみても眠そうだ」

 

「……とりあえずあそこのコーヒーショップでも入るか」

 

カイトは手で風を扇いで言った。

 

 

 

 

「済まないねえ。今水が涸れていて」

 

“…別に構わないのです”

 

「いや……。いつごろから涸れているんだ?」

 

「……実は、2週間前からだ。住みきれない人間は砂漠を超えようとどっかいったよ」

 

「……そうか」

 

“だから寂れているのですね”

 

「ああ……。なんだい君はこの男の奥さんか?」

 

“……違います”

 

「ああ。そうか済まない済まない。とても綺麗だったからね」

 

 がっはっは、と豪快に嗤うマスター。

 

「にしてもなあ。さっさとあの岩が崩れて欲しいもんだ。あれがあっから水が涸れてな」

 

「……その岩を爆薬で崩せばいいのではないかね?」

 

「爆薬なんてないよ。そんな高級なものがあればとっくに使っとる」

 

 そうですか、と頷いて。

 

「では……行くか、アキューア」

 

“そうですね”

 

「おい……。厚手がましいが、どこへ?」

 

「決まっている」

 

「やるべきことをやるために」

 

 そう言って男とアキューアは去っていった。



 しばらくして男が帰ってきた。

 

「おう。あんたか。聞いてくれよ!! 実は水が……!!」

 

「そうですか」

 

 男は全てを聞く前に答える。

 

 そして、

 

「それじゃあ、アイスクリームをひとついただけますかね?」

 男は、笑って言った。