第五話
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砂漠を、とある人間が歩いていた。
それは砂漠の炎天下には釣り合わない青いマフラーを首に巻いた青い髪の青年だった。
「……暑い」
“それはそうでしょう。そんなマフラーをしているのですから”
彼の隣には、これまた水色のワンピースを着た女の子が歩いていた。
しかし、彼女は涼しげだ。
「しかし涼しそうだね。その『水』の力を分けて欲しいよ」
“水浸しでよければ能力を行使しますが?”
「……いい。蒸し暑くなりそうだ」
“そうですか?”
涼しげに、かつ寂しそうに返した。
「……まったく。ほんとうにアキューアは涼しそうだね。さすがは水のサーヴァントだね」
“カイトもこの暑さでマフラーをまいていられる精神がおかしいと思いますよ?”
カイトとアキューアは、それぞれ皮肉を言い合っていた。
“おや? カイト。街が見えてきましたよ?”
「ほんとうだ。オアシスかな。あわよくば休ませてもらおうかな。アイスもあればいいなあ」
“こんなオアシスにアイスなんてあるわけありませんよ”
ふたりは、町にたどり着いた。
「荒れた町だ。とてもオアシスには見えないね」
“水が涸れているようですね。だから人も土地も潤ってないのでしょう”
「なるほど。これじゃあアイスも食べれそうにないね」
“まずは休みましょう。私の水も供給しておきたいですが……。この際仕方ありません”
アキューアは、眠たそうな目で言った。
「アキューア。眠いのか?」
“……いえ。私は眠くなんてありませんよ”
「嘘付け。どうみても眠そうだ」
「……とりあえずあそこのコーヒーショップでも入るか」
カイトは手で風を扇いで言った。
「済まないねえ。今水が涸れていて」
“…別に構わないのです”
「いや……。いつごろから涸れているんだ?」
「……実は、2週間前からだ。住みきれない人間は砂漠を超えようとどっかいったよ」
「……そうか」
“だから寂れているのですね”
「ああ……。なんだい君はこの男の奥さんか?」
“……違います”
「ああ。そうか済まない済まない。とても綺麗だったからね」
がっはっは、と豪快に嗤うマスター。
「にしてもなあ。さっさとあの岩が崩れて欲しいもんだ。あれがあっから水が涸れてな」
「……その岩を爆薬で崩せばいいのではないかね?」
「爆薬なんてないよ。そんな高級なものがあればとっくに使っとる」
そうですか、と頷いて。
「では……行くか、アキューア」
“そうですね”
「おい……。厚手がましいが、どこへ?」
「決まっている」
「やるべきことをやるために」
そう言って男とアキューアは去っていった。
しばらくして男が帰ってきた。
「おう。あんたか。聞いてくれよ!! 実は水が……!!」
「そうですか」
男は全てを聞く前に答える。
そして、
「それじゃあ、アイスクリームをひとついただけますかね?」
男は、笑って言った。