第七話

<< 第6.5話 |ここです| 第八話 探偵と腐れ縁 >>

 

機械都市タートル。

スクヴァトス王国で一二を誇る、機械の街。

その殆どが機械によって運営されており、人による護衛がない。

そんな『究極の守り』によって人々は潤い、豊かになっていた。

「すごいなぁ……」

レンはそんな街の朝市に来ていた。

そこにあるのは厚切りのお肉を鉄板の上で踊るように焼かせたもの。

「旨そうだなあ……」

レンは口から溢れる涎にも気づかず、言った。

「ほら、そんな時間はないのよ」

ルカが不意に引っ張られ、レンは我に返る。

「いったいどこにいくのさー」

「いいから、だまってついてきなさい」

“ついてきたほうが得ですよ”

ルカと同時にフロウス――彼女のもつサーヴァントだ――の言葉がレンにかかる。

「飼い主に似る……ってか」

「何か言った?」

「いえ、何も」

と、ルカがいざ足を踏み出したその時だった。

「あら?」

ルカは不意に立ち止まる。

ルカの視線の先には、青いマフラーをつけた男がいた。

「カイト兄さん……!?」

ルカは小さく叫ぶ。

「……え?」

「い、いや、なんでもないわ。ともかく行きましょう」

ルカは再び、レンのうでをつかんで、歩いていった。


***


「さてと。」

しばらく歩いて、ルカが立ち止まる。

「今度はなに?」

「ついたわよ」

ルカの言葉を聞いて、その目の前の建物を見る。

そこはレンガ建ての古びた建物。おそらく築ウン十年は超えていると見た。

「……『レイジン・ストライカー探偵事務所』……」

レンは入口の上にかかっていた看板を見て、そこに書かれている文字を言った。


***


そのころ青いマフラーをまとった青年――カイトもとある場所に来ていた。

そして、つぶやく。

「――何時から追っていた?」

声が、返る。

「流石は、クリプトン王家。気配を消していても解るとは」

そこにいたのは白い髪の妖艶な女性。

「――聞いたことがある。レイジャック王国にはスパイ目的のために育成されたものがいると。たしかその名前は」

「無駄口を叩いている場合ですか?」

そう言って、女はカイトに向かって走り出す。



――ひとつの街の二つの場所で、

――二つの物語が始まる。



つづく。