第一話

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「鏡音レンはいるか」

大理石で一面覆われた石造りの聖堂に声が響く。なぜ聖堂というのが判断できたのかというと壁の所々で石像――十字架を持っている――が置かれているからだろうか。

「なんですか。こんな朝っぱらから」

当の呼ばれた本人は、寝起きなのか、低い声で応答する。

彼は黄色い髪の少年だった。

服装はそれなりの装飾を施したマントに鎧をつけていた。あと特徴的なところといえば申し訳なさ程度に首に小さい十字架のペンダントをつけているくらいか。

「姫様の呼び出しである」

低い声はさらに彼を呼ぶ。

「姫様? ……ああ。リンのことですか? どうもその呼び名に馴れなくて」

「……とりあえず姫様の呼び出しである。顔を洗ってさっさと来い」

そう言って低い声の主は足早に去っていった。


***


ここ、スクヴァトス王国は代々クリプトン家が支配している国家である。

まわりを砂漠に囲まれ、この国はその砂漠のオアシス的存在となっている。

主な産業は豊富な鉱物資源をを利用する工業であり、それで作られた製品を利用して、輸出して、それを収入源としている。

もともとは世界で一番を誇る国家だったのだが――

1年前。

とある少女が消えたことにより、今の現状となってしまった。

少女の名は――初音ミク。

王であり、歌姫であった彼女の消失は、少なからず世界に衝撃を与えた。それほどのものだったのだ。

「……おい、聞いているのか?」

そう言われて、彼は我に返る。

そこは女王の間。王が一般の人間と謁見する場である。

「面を上げよ。レン」

一年前まで、よく一緒に遊んでいた少女の声を聞き、彼は言うとおりにする。

そこにいたのは14歳位の少女。レンと同じような黄色い髪だった。それを映えさせるような黄色いドレスを身に纏っていた。

彼女の名前は鏡音リン。

リンとレンは、双子であり、昔はよく遊んでいた。

しかし、ミクの消失により、代々の決まりからリンがその位を継ぐこととなった。

「なんの御用でしょう。姫」

わざとらしく、ただし敬意を見せるように言った。

「……ほんとうはあなたに言うのは忍びない。一応クリプトン家の直系であるからな」

「で、なんでございましょう?」

「これからいおうとしたのだ」

リンは咳払いをして、

「……初音ミク……ミク姉さんを探しに行ってもらいたい……!!」




つづく。