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 神堕ち、という話を聞いたことがある。妖怪や幽霊といった『カミサマではない』霊体が長い時間をかけてカミサマへとなったケースである。そのケースは非常に珍しいケースで、俺が知ってる程度でも数えられるくらいしかない。

 

 碧さんが言うには、つまりは葛葉はカミサマになったと言っている。神堕ちをして、カミサマになったということだろうか?

 

「まあ、細かいことは知らないけれど、とりあえず調査したほうが早いかしらね?」

 

 だからなんであんたが先導しているんだ……とかそんなことは言えず(言ったら何されるか解らない)、結局は碧さんに従うことしか出来なかったのだった。

 

 ◇◇◇

 


 捜索をするったってある程度の位置を定めなくちゃならない。とりあえず依頼人が言っていた場所付近へと向かうことにした。

 

 東京都新宿区の歌舞伎町である。歌舞伎町一番街とかかれた大きな看板(ゲートの方が表現としては正しそうだ)をくぐり、ようやくたどり着いた。

 

「人が多いな……。ったく、ほんとうにここなのか?」

 

 俺は独り言を装って碧さんに訊ねた。碧さんは幽霊だから、しょうがないっちゃしょうがないんだが、傍から見れば色々ヤバイ人にしか見えないので、そろそろ何らかの対策を講じたいところではある。

 

「なんだろうね。確かに気配はある。『葛葉』は確かにここにいたんだろうね。そして、あいつと接触した」

 

「せめて依頼人と言ってくれ」

 

「気配だけなんだよねえ。これだけじゃ何処へ向かったか……ん? なんだか気配の跡が残っているねえ」

 

 そう言って碧さんはくんくんと匂いを嗅いで、ビルの路地裏へと入っていった。おいおい、そんなところに居るわけねえだろうよ。

 

 ……と、碧さんを置いておくわけにもいかないので、俺もついていくことにした。なんだかめんどくさいと言えばめんどくさいのだが、仕方がない。何かあったら困るしな……。

 

 

 

後半パートは06/16頃更新です。