03
「つまりどういうことなんだよ?! ……迎えも無しか、ったく」
「グラム。一応言っておくが我々は左遷でここまで来たんだからな? それを理解してもらわんと困る」
「解ってますよ。どうせ命令したのはアイツなんだから。あの薄汚ねえクズがな。糞でも食ってればいいんだあんな奴」
「……そんなこと言ってると反逆罪の対象になってすぐ銃殺されることを言っておこう」
グラムが職務態度を改善する方向がなさそうなのをリーフガットは既に解っていたがここで再確認する羽目になってしまったのは言うまでもない。しかし、それは非常にめんどくさいことであるのはリーフガットも隣にいるサリドもよく知っていることだった。
「……んで、こっからどこ行きゃあいいんです? まさかこの炎天下の中歩くわけにもいきませんよね」
「そのへんは大丈夫。ほら、あそこに」
リーフガットが指差した先には、小さなトラックがあった。ちなみに、今来ている人数は十数人(リーフガットが率いる軍は三十人余りいるが、半分は中央に置き去りにされた)なので、乗ることは充分可能ではある。
(……まあ、置き去り=行動不能とは思わないことね。中央の犬め。そう簡単に戦力を削れただなんて笑っちゃうわ)
「……あのー、リーフガットさん? あれでいいんですよね?」
サリドの言葉を聞いて、はっと我に返ったリーフガットは冷静を取り戻して、少しだけ笑った。
「ああ、そうだ。……さて、行くぞ」
そして、リーフガットを先頭として、サリドたちはトラックへと向かった。
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トラックでは、陽気な女性がスタンバイしていた。軍の規制に引っかかりそうな(既に引っかかっている?)赤い髪に、眼はカラーコンタクトを入れているのか、少し青い。そんな女性はやっぱり見た感じのままの声で言ったのだ。
「――チップいただきたいんだけどー」
「はぁっ?」
応答したのはリーフガット。
「ここまで呼んでおいてチップの一枚もなし? 相場くらい解っているよね?」
「それでも軍人か貴様」
「軍人みたいな厳しい規律に背いたから私はここにいるのよ。ちょうどあなたたちみたいにね」
「解ったわ」
諦めたらしく、リーフガットはポケットから何枚か硬貨を取り出した。
「……ところで名前を聞いておいたほうがよさそうね。今後の為にも」
「そうね」
女性は、毎度ありと言って硬貨を受け取った。
「マリー・ベリーっていうの。よろしくね」
マリーはそう言って笑い、ハンドルを握った。
「え。まさかあなたが運転するの……?」
「だって、私しかいないでしょう? これでもゴールド免許……来年にさえなれば、」
「おいおーい!! すごい信頼出来ないんですけどー?!」
「グラム黙ってろ。カミサマにでも祈っとけ」
「どこに!? 神殿協会?! はたまた大神道会?!」
「……お前の宗派によるけど?」
「スルーされたんですけど俺宗教信じてないっすよ?」
「じゃあ、諦めるんだな。さっさと死ね」
「ひどい! ひどすぎる!! あと最後の一言は明らかに私怨が含まれてる!!」
「はーい、それじゃー行くよー」
マリーはそんなコントまがいなグラムとリーフガットの会話を無視するかのようにアクセルを思いっきり踏み抜いた。
そして、車は勢い良く発車した。
つづく。