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 リビドー群島は『安全国』レイザリー王国の南に位置する永久中世の群島である。自治も王国側から認められているからか、独自の経済発展を遂げているが現在軍事力の世界的飽和に乗り遅れたためか、軍事に関してはレイザリーの力を借りなくてはならない。

 そこで“厄介者”の出番というわけだ。

 厄介者は即ち、軍からも煙たがられる異質な存在ばかりが集まる。そんな人間に軍の責務など果たせる訳もない。

 しかし、かといって退職金などを払うのも難しい。

 ならば、どうするか。

 簡単だ。『自治国家に押し付けてしまえばいい』のだ。

 

「……それでここまで飛ばされたってのか。……ヒュロルフタームと姫様も一緒に」

「そうよ。リリー、あんなに嫌がってたわ。そりゃそうだろうねえ。……彼女、ここの恐ろしさ知ってるから」

「恐ろしさ?」

「そう。レイザリーで言ってたような、あんな生半可なもんじゃないの。そんなのですまない組織がいるのよ」

 

 『コブラ』と名乗る組織がある。もとはプログライト直属の秘密軍事部隊であったが、プログライト戦争が起きてから、国からの支配を脱し、現在ではフリー形式で行う謂わば傭兵部隊となっている。

 

「……しかし、コブラは今や解散したはずじゃ? 確かつい先程のグラディア侵略戦の時に爆撃に巻き込まれて……とか」

「何年も戦線の第一線にいた軍人がそんなもんでやられるわけないだろう」

「ですよねえ」

「ならなんで言った。私も疲れているんだ。ああ、これでエンパイアー家に泥を塗ってしまったとかいろいろ親戚中から言われているんだ……!! まったく出来ない部下よりひどいからなお前らは」

「それって褒め言葉?!」

「んなわけないだろ馬鹿が」

 

 そんなこんなで、リーフガット率いるメンバーはリビドー群島へ強制送還されることとなった。

 彼女たちを出迎えたのは、心地よい潮風だった。しかし、それでもグラム以外の全員がいい顔色を示さなかった。

 考えてももらえば解るが、もともと自立軍隊がないとはいえ他国の軍隊を国民は出迎えるだろうか?

 答えは、ノーだろう。そんなこと、有り得ない。

 ――つまり、サリドたちは今国民たちから『居ない存在のように』扱われていたのだった。

 

 

つづく。