外伝1『リリー・ダレンシアの初めての戦い』

第1話

 結局、いつの時代も戦争は起きる。
 かつては機関銃を用いてドンパチ、生身の人間どうしでしている時代があった。
 かつては『戦争はやめませう』とかいうお偉いさんの鶴の一声で戦争をしなくなる時代があった。
 でも、結局、戦争はなくならなかった。
 そして『生身の人間で構成された兵隊』に存在意義を見いだせなくなった。
 そんな中、生み出されたもの。
 ヒュロルフターム。
 ヒュロルフタームは、人間の代わりとなり、戦うことになる。
 そして、生身の人間で構成された兵隊は、消えることを強いられていく。
 それは、そんな世界のひとりの少女の物語。




――




「プログライトの戦争ももうはじまりだいぶ経つが……。この落とし前をどうつけるつもりだ?」
「しかし、委員会のシナリオではあと3年はかかると……」
「委員会の通達ならば仕方ないが、なるべく早く終わらせて欲しいね。国力をなるべく裂きたくないんだ。わかるだろう?」
 ひとりの少女が、ベッドの上に腰掛けて、隣にいるスーツを着た男に話しかける。
「えぇ……。確かに解りますが、委員会の判断は世界の判断に均しいものでして…」
「仕方ないわね。まぁ、いいわ。それはおいときましょ。ほかは?」
「えーと……、ヒュロルフタームノータのリリー少佐の件ですが……」
「リリー少佐がどうしたの?」
「いえ……あの、」
 スーツを着た男は、口を噤む。
「いいわよ。別に。いいから言いなさい」
「ええ……。では、申しさせていただきます」
 一息。
「……、行方知らずとなりました」
「は?」

 少女はその言葉を聞いて、思わず言葉を失った。

 

 

--

 

 

「ちょっと待ってよ。リリー少佐は確か休暇をとっていたんじゃなかったの? この前ヒュロルフタームのテストを受けたばかりだから、ってことで」

「はぁ……。たしかにそうでしたが。今日来るはずだったのでガンテ少尉に確認したところまだ来ていないとのことで」

「何やってるのかしら……。あのバカは」

 少女はそう言ってため息をつき、空を見た。

 空は、清々しいほど青かった。