第三話
城をでるのは、あまりにもあっさりとしたものだった。
もう少し、別れの何かがあると思われたが、実際はリンからペンダントと剣をもらっただけ。
「ペンダントねえ。しかもロケットの。
一体何に使うやら」
そう言ってレンは、左胸のポケットにペンダントをしまった。
「……ところでルカ姉さん、どこに行くの?」
「さしあたり最短ルートでこの国を脱出しましょう。
まずは……機械都市タートルかしら。そこならそう遠くはないし」
ルカは地図を見ながら、言いふと思い出す。
「そう言えば、レン。
魔法は使えるっけ?」
「魔法?
聞いたことはあるけど」
「……なんてこった」
思わずルカは頭を抱えた。
「じゃあ……仕方ないわ。
道中、魔法のレクチャーもしていきましょう。
戦わない、って保証はないんだから」
***
城から少し離れた高台に二人はやってきた。
「さて……それじゃあ、魔法のレッスンと行きましょうか」
「まず魔法の概要からお願いします」
「分かったから土下座をやめろ」
ルカは土下座をしているレンに回し蹴りをした。
「……説明は結構ざっくばらんにするけど」
ルカは一息ついて、
「魔法というのは正確には術者[マスター]自身が放てるものじゃないわ。
正確にはサーヴァントという術者が呼び出す『守護霊』が使うことができるものよ。
話をずらすけど守護霊ってのは霊装という数少ない特殊なものを媒体をして作り出した力の塊のようなものかしら。
術者は呼び出した守護霊を操れるかわりに守護霊に魔力、精神力みたいなものね、を供給し続けなければならないの。
まあ、それは実体化しているときだけだけどね」
「……いつもはその、“守護霊”ってのは、どうしてるの?」
「これよ」
そう言ってルカは木でできた杖を取り出す。
「これ?」
「――――『フロウス』。実体化を許可する」
杖を高く掲げて、言う。
冷たい、静かな声だった。
その刹那、ルカの周りに風が吹いた。
ゴオオオオ!! と風は容赦なく叩きつける。
しばらく、レンは目をつぶっていた。
そして。
風が止んで、目を開けたレンの視界には、
ルカと、その隣にいた白いドレスを着た蒼い髪の女があった。
***
「およびですか。マスター」
白いドレスを着た青い髪の女は、口を殆ど動かさずに言った。
「……すごい」
レンは単純に感動していた。自分の目の前で起きた“非現実な”ことに。
「さあ」
ルカは“フロウス”と呼んでいた女が消えてから――実体化を解除したからだろう――こう言った。
「次はあなたの番よ。
まずサーヴァントの呼び出しから行きましょう」