File:19

「やあ、君たち。出迎え、ごくろうだった」
 突如現れたノード博士は、何もなかったかのようにそう言う。
「ってノード博士! ご自身で脱出できたんですか!?」
 ミックが率直な疑問をぶつけた。
「そうだとも、君たちの騒ぎに乗じてな。それに、手ごろなIEMを没収されずにいたから、時限式にオーバーロードして、奴らに持たせてやったよ」
「……そう、ですか…………。ご無事でなによりです」
 先ほどのエネルギーの源はそのIEMだったようだ。
「諸君、まずはここから脱出せねばなるまい」
「おっしゃる通りですわ、ノード博士」
 エレーヌが壁に手を当て、次々に壁を粉砕してく。
 3枚ほど突き破ったところで、外の景色が見えた。
「それじゃガッツ、博士を持ち上げてお連れするんだ」
「了解だ。隊長」
「隊長殿、私を持ち上げるとは、目的地まで飛んでいく、ということか?」
「そうです……。どうかなさいましたか?」
「彼が私を持ち上げる必要はない。私は、体内にIEMを移植している。飛ぶことなど造作もない」
「……そうですか。お体の調子もありますから、十分注意してください、博士」
「君の方こそ、怪我の具合が心配だと思うがね、隊長殿」


 †


 一行は無事、ベースキャンプへと降り立った。
 そこには、報告を受けて待機していたクレアと、後方支援をしていた通信兵や衛生兵達。
 そしてクレアが、
「お父さん!」
と一直線に博士の胸に飛びついていった。
「お父さん!」
 もう一度呼びかけ、クレアは泣き出してしまう。
「すまないな、クレア……」
 博士は、娘の頭をゆっくりとなでて、謝罪の言葉を口にした。
 そして、
「手放したくはなかったが……。あのIEM、無くしてしまったよ」
 その一言は、誰も聞き取れなかった。


  †


 しばらくして、皆が治療を受けていると、ミックのところに通信兵が一人、あわててやってきた。
「ミック隊長! 伝令です」
「なんですか?」
「大統領閣下より、魔導第0部隊はノード・カーペンター博士を連れて、至急大統領官邸へ出頭せし、今回の事件および作戦についての報告をせよ、との命です」
「わざわざ大統領が?……。ノード博士、よろしいですね?」
 横で治療を受けていた博士に問いかける。
「承知した」
 博士は、ミックに頷いてみせる。
「それでは隊長、ヘリがすでに待機しています。すぐにお乗りください」
 通信と敬礼を交わし、ミックは立ち上がった。



File:19 fin.

TO BE CONTINUED BY FILE:20.

2011/10/03

WRITTEN BY yassyro