File:17

「うがぁああ」
 左肩に凶弾を受けたミックは、低く悲鳴を上げた。
 血が噴き出る右肩を瞬時に抑え、後ずさりしながらも、何とか体のバランスをとる。
 しかし、さらに2つの銃声。
 今度は、ミックの両ももに命中した。
 体は支えを失い、その場で横に倒れる。
 次の瞬間、皆がジョンに飛びかかった。
 ガッツ、キャスカ、ミレーヌ、IEMによって強化された、ただならぬスピードと力で襲いかかったはずが、それをも寄せ付けない見えない障壁が生み出され、はね返される。
 3人に隙が出来た瞬間、IEMを取り上げられた、無防備なロマを捉え、銃口を額にあてる。
 そして、ニヤリとして満足げな顔をしたジョンは、引き金に指をかけた。





 ミックは体を支えられず、視界が徐々に傾いてゆく。
 ついに、床と激突した。
(あれ? 痛く、なくなったな……)
 ぶつかった部分も、銃で撃たれたところも、痛さを通り越して、何も感じない。
 視界には3人がジョンに突撃する姿が映っていた。。
(あれ…… 目も、見えなくなってきたや)
 視界も意識も、徐々に失われてゆく。
(ロマ…… 危ない……)
 銃が、ロマに向けられ、
(や…め…)
 そして、引き金がひかれる。
「やめろぉぉおおおおおおおおおお」
 IEMが稼働する、ハードディスクが奏でるような音が、部屋中に大きく響いた。





 銃が弾丸を放つ前に、部屋中のものが、一瞬、浮いた。
 その中でも、ジョンが手にしていた銃だけは、天井近くまで飛翔し、途中で粉々に砕け散る。
「なんだ?!」
 ジョンは、辺りを見渡すと、そこには、倒れているはずのミックが、うつむきながらも立っていた。
 出血していたはずの銃創からは、何も出ていなかった。
「良いね良いねッ! 楽しませてくれんじゃん!!」
 無言のミックは、おもむろに開いた右手をジョンに向けた。
 部屋に、二度目の轟音が響き、床に落ちていた石塊[イシクレ]が、壁が砕けできた大小さまざまなそれが、弾丸以上のスピードで、ジョンにむかって放たれた。
 全方向から、石塊が迫ってくる。
「ふん。こんなもの」
 石塊の隙間を縫って、ジョンはよけてゆく。
 しかし、石塊は軌道をかえ、再びジョンに向かってゆく。
「これならどうだ!」
 体の周りに、球状の障壁を展開。
 石塊は、その周りを覆い尽くし、大きな石の塊が作りだされた。
 石塊が、力の拮抗で時折振動する。
 ついには、石の塊は一気に縮小し、人の大きさ以下になってしまった。
 そして、
「うぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」
 ミックの雄叫びが「窓のないビル」に轟いた。



File:17 fin.

TO BE CONTINUED BY FILE:18.

2011/09/06

WRITTEN BY yassyro