File:15

「え? ビルコが?…… 彼は、国境の作戦本部にいたんじゃないのか?! あそこは安全圏のはずなのに、なぜ……?!」
 焦った様子で、ミックはエレーヌに詰め寄る。
 それを、腕でキャスカは制した。
「隊長、今は個人よりも作戦本部の状況を知るべきです。エレーヌ、本部の状況を訊き出して」
「クレア、聞いてましたわよね。そうですわ、本部の状況を…… ビルコがさらわれた以外は、損害無しですって?!」
 お嬢様には似合わない、目が飛び出たかのような驚きの顔を、エレーヌは見せた。
 それとは真逆に、冷静な声色でガッツは、

「それならば、この誘拐の件は、今回の突入作戦とは無関係だな。敵がさらっていったのなら、何かしらの破壊工作をしていくだろう」
「それもそうだね……」
 落ち着きを少し取り戻して、ミックは冷静に考える。
 たしかに、ブラッド・サースティーの仕業ならば、この作戦を失敗させるため、小隊の外部通信手段を奪うだろう。
「よほど大きな秘密を、ビルコが抱えているのなら別だが…… ともかくだ、半ば閉じ込められている俺たちに、外のことで何か対応が――」
「あんたらにとって、ここは敵地だろ」
「え?」
 先ほども聞いたような男の声が、後ろからした。
 音に反応して、ミックはそちらを見ようとする。
 しかし、振り向き終わる前に、
「キャーーーーァァアアア!!」
 ロマの、叫び声。
 そして、暗闇に紛れるかどうか、ぎりぎりのところにロマを捉えた“ジョン”の姿。
「あんたら、警戒しなさすぎだぜ。ここは敵地だってのに…… それでも軍人かい?」
 ロマのこめかみに銃口を押さえつけ、恐怖の表情を眺めながら、ジョンは言った。
「お前…… さっき、ガッツが殺したはずじゃ……?!」
 ミックの言葉に、ジョンは、
「驚いてくれて良かったかな? なかなか面白そうな連中だから、面倒くさいのがどっかに飛んで行っちまったよ。一緒に、楽しもうぜ」
「こんなことが、絶対に楽しいわけが――」
「じゃあまず、俺が死んでないことの種明かしは、俺にたどり着けたらってことで。正解が分かったら、楽しいだろ」
 ロマとジョンの姿は、もう見えなくなってた。



File:15 fin.

TO BE CONTINUED BY FILE:16.

2011/08/30

WRITTEN BY yassyro.