File;14

「なにっ!?」
 方向を転換させた銃弾は、ちょうどガッツの背中の方向に向かっていた。
 しかし“いくらたってもやってこない”。
 それどころか、銃弾は直角に曲がり、壁にぶつかり、銃弾はそこで吸収され、消えた。
「危ないところだった…… ガッツ」
「ミック……。まさか、あなたが?」
 エレーヌの問いかけに、ミックは静かに頷くことで答える。
「……まさか、まさか」
 肝心の“ジョン”は、銃弾を切り替えされたことにより、慌てている。
「The Endだな。ジョンとやら」
 そう言って、ガッツはその剣と呼ぶには大きすぎる剣で、ジョンの身体を真っ二つに切った。





 外にいたビルコ・トライアムが、ミックたちに通信したのは、その直後だった。
「どうした? ビルコ」
「……通信が途絶えたので、どうしたのかと」
「特に問題はないかなぁ」
 ミックはそう言って笑う。
「そうですか……。なら安心です」
「いや、ひとつだけありますわ」
 気付くとミックの手にあった通信機はエレーヌの手にあった。
 ――たぶん、自分の手と通信機にかかる摩擦力の向きを変えたのかな。
 ミックはそんなことを考えながら、エレーヌとビルコの会話を聞く。
 このミックたちが着ている防護服は、通信は傍受できるものの、自分から発信はできない。
 ……つまり彼らは通信機がないと一方通行なのだ。
「……なんです?」
「『アルティメット・カルキュレータ』についてです」
「……」
 エレーヌは、ビルコの呼吸の変化を、逃さなかった。
「どうしたのです? なにか知っておいでですか?」
 エレーヌは尋ねる。
「……今ここでは言えません……。帰ったらお話します」
「そう……。わかったわ」
 そう言ってエレーヌは通信を切った。





 通信が切れてもなお、ビルコの体から汗が止まらなかった。
「……どうしたのですか?」
 クレアは不審に思って尋ねる。
「……今、君に、話しておきたいことがある……」
「?」
 ここまできて、ようやく彼女はビルコの“異変”に気がついた。
「……君のお父さん、ノード・カーペンターは……!!」
 ビルコは、彼女に早く伝えるべきだと、思ったのだろう。
 だから、だからこそ、気づかなかった。
 後ろから近づく“影”に――





「……あれ?」
 ミックが“別の異変”に気付いたのは、ちょうどそのころだった。
「どうした? ミック」
 ガッツが尋ねる。
「いや、死体が……」
 ミックが答えようとしたそのとき、
 再び通信機から、呼び出し音が鳴る。
「今度はなんですか…… まったく」
 エレーヌは多少うんざりしつつも、通信に応答する。
「もしもしこちらエレーヌ・マクベラスですわ」
 通信をしたのは、クレアだった。
 彼女の口から伝えられたこと、それは――
「ビルコ・トライアムが拐われた……?」


File:14 Fin.

To be continued by File:15.