File:13

 ラングレーが部屋を出た後、 男は受話器をとってダイヤルを回した。
 短い呼び出し音のあと、回線が繋がる。
「敵に進入を許した。お前の責任だ、自分で始末をしろ」
 端的に用件だけを伝える。
 相手の返答に、はたまた端的にこう答えた。
「ああ、何をやってもかまわない。早急に対処しろ。それだけだ」


 †


 ミックは通信機を通話モードにして、耳に当てた。
 通信をかけてきたのは、おそらく、クレアかビルコだろう。
「はい、こちら魔導第0部隊隊長ミック・サフレス」
『やっと繋がったか……』
 見知らぬ声。
「おまえ…だれだ?」
『俺か? そうだな、とりあえず“ジョン”とでも呼んでくれ。 この建物の防衛隊隊長だ』
「ブラッド・サースティー……」
 そのとき、建物内に銃声が鳴り響いた。
 通路の一方からの弾丸を、ガッツが背の大剣を抜き、 すばやい立ち回りで叩き切った。
「ちっ……。一人くらい殺れると思ったのに……」
 通信機からと同じ声が、弾の放たれた方から聞こえてくる。
 そこには、目まで隠れてしまうほどの、前髪が長い、 黒髪の男がいた。
「幹部クラスが、やっとお出ましってわけか! ……。ミック、 気を緩めるな!!」
「そんなの分かってる!」
 ミックは声を張り上げる。
「ああ面倒くさい。さっさとやられてくれないかな?」
「なら、さっさとお前を倒してやるさ!」
 ガッツは床を蹴った。
 IEMの力も利用し、少なくとも常人ではなしえない超速度で、 ジョンとの距離をつめてゆく。
「嫌いじゃないよ。あんたみたいなの」
 そういって弾を2・3発、放った。
「ふん、そんなのが当たると思うか!?」
 細かい動きで、見事弾丸をよけてみせる。
 これで0距離。ガッツが剣を振りかぶったとき、 ジョンが苦笑いを見せた。
「弾が直線しか進まないと思ったら大間違いだぜ」
 よけた弾の弾道は、ガッツの方へと、 先ほどとは真逆に変わっていた。


File:13 fin.

TO BE CONTINUED BY FILE:14.

2011/05/07

WRITTEN BY yassyro.