File:12
「くそっ!! やられたか……!!」
ミックは奥歯をかみしめた。
「ミック。暗視ゴーグルをかけろ」
暗闇から、聞き覚えのある声が聞こえた。
それに従い、尋ねる。
「どうすればいい?」
「首にあるボタンを押せ。そしたら顔もそのスーツが覆う。それが暗視ゴーグルの役割を果たすからな」
「……わかった」
そう言って、ミックは首のボタンを押す。
刹那、首にあったスーツの生地が、頭を包んだ。
最初は苦しかったものの、すぐに慣れた。
「……さあ、行くぞ」
ガッツの言葉を聞き、ミックたちは進む。
――それ、僕の言葉じゃないか?
ミックは、ひとり考えながら。
†
「侵入された、だと?」
「はい」
会議室らしき部屋で、男と女が、話し合っている。
先程、話し合っていた二人。
「……く、早くあれの居場所をノード博士から吐き出させろ!!」
「『アルティメット・カルキュレータ』のことですか」
「……ああ。あの『神様にしかできない演算』とやらをやってのけてしまう、とかいう! あれとIEMさえあれば! 我らは世界の裏でこそこそとしないで済むんだ!」
「……わかりました。では、もう一度ノード博士に聞いてみます」
「頼むぞ」
そう言って、二人は解散した。
†
案外、“窓のないビル”の中の作りは簡単にできていた。
核となる二つの部屋と、階段。それを囲むように廊下が組まれていた。
ミックたちはひとまず、近場にいた兵士を捕まえ、情報を手に入れた。
手に入れた情報は3つ。
ここが、8階で、この建造物の最上階であること。
ノード博士は地下の牢屋にいるとのこと。
そして、最後。
これだけが、誰にも、わからなかったこと。
『ブラッド・サースティー』の目的はIEMと、『アルティメット・カルキュレータ』というもの、ということだ。
†
「……ほかの二つは納得いきますが、最後の一個」
「『アルティメット・カルキュレータ』だったな。直訳すれば」
「『究極の演算器』……。一体何なんでしょうね……」
エレーヌ、ガッツ、キャスカがかわりばんこに語る。
それを聞き、ひとり考えるはミック。
「……手詰まりか……」
ガッツがうなだれたそのときだった。
ミックの無線が、ブザー音を鳴らした。
「……誰だ?」
ミックはとりあえず無線機に手をかけた。
File:12 fin.
TO BE CONTINUED BY FILE:13.
2011/04/27