File:08

 中に入ると五人くらいの人間が、 丸い一つのテーブルを中心に円形に座っていた。
 ミックとエレーヌが入ってきたのを確認すると、 全員が続々と立ち始める。
「……」
 中にいたロマとクレアを除いた3人が二人の方を見ていた。
「……隊長はお前か?」
 奥にいた体型のいい、ごつい男が言った。
「……こちらのほうがね」
 エレーヌは右に、ちょうどミックの胸の前に、手を置く。
「……!!」
 その時、わずかながら空気が凍りついた。
「……ま、いいんじゃないの。なんせ今回の部隊は“適合順” に決まってるらしいし」
 真ん中にいた赤い髪の少女が答えた。
「ぐむむ……」
 それを聞いて、奥の男は話すのをやめた。
「……ま、まあ皆さん! 喧嘩はやめましょうよ!」
 手前にいた黒い髪の男、背の高さはミックと同じくらいだろうか、 が言った。
「では、自己紹介と行きましょうか」
 エレーヌが、テーブルに手を当て、言った。
「じゃあ、隊長から」
「……え?」
 ミックは一瞬うろたえたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「ミック・サフレスといいます。……まあ、よろしく」
「……じゃあ、次は私ね。私はエレーヌ・マクベラス。 肩書きは魔導第0部隊副隊長ですわ」
「……じゃあ私ね。私はクレア・カーペンター。 この部隊のメカニックをしているわ。よろしく!」
 クレアは少し微笑みながら、言った。
 その時ミックはわずかながら、ドキッとした。
「私はロマ・リーファ。肩書きは魔導第0部隊隊長補佐官。 まあ隊長が使えないと判断したときは私に言って」
「じゃあ次はあなたね」
 ロマがそのガタイのいい男に言った。
「ああ」
 男は剣を背負っていた。
 しかし、それは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく、 ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎて見えた。 それはまさに鉄塊だった。
「……俺はガッツ・リンベルト。武器幕僚を務める。 武器のことは俺に言ってくれ」
 ――あの人一人で一部隊は壊滅できそうだな。
 ミックはそう思っていた。
「じゃあ、私の番ね」
「私はキャスカ・フェリオール。 この部隊の作戦幕僚を務めることになったわ。 主に作戦は私が作ることになると思うから」
「……最後に、あなたの番よ」
「……そうですね」
 手前にいた男は、今まで眠っていたように目をつむっていたが、 ようやく目を開けた。
「……僕はビルコ・トライアム。この部隊の“二人目” のメカニックです。まあ、クレアさんには及びませんけど」
 そう丁寧に頭を下げながら、言った。
「……して、副隊長。作戦実行まであとどれくらいなんだ?」
 ガッツは、エレーヌに聞いた。
「えーと……今日は12月11日ですから……あと6日ですわね」
「ならばすぐに作戦を立てるべきだろう?」
「……あの」
 ミックがガッツに尋ねた。
「なんだ?」
  ガッツは無造作に答える。
「……その剣、どうして持っていられるんですか?」
「……お前」
「はい」
「魔法、知ってるよな?」
「……一応は」
「じゃあ、説明する気はない」
 ガッツはそう言って、出ていった。
「ちょっと、どこ行かれるのかしら?」
 エレーヌがそれを止める。
「武器の手入れだ。あと6日しかないのだろう? ならば先に済ませたほうがいい」
「……ちょっと! まずは作戦を……」
 エレーヌが言葉を言い終わる前に、ガッツは外に出ていった。
 ――こんなので作戦が成功するのかしら?
 エレーヌはそう思って、ため息をついた。

File:08 FIN

TO BE CONTINUED BY File:09.