File:04

「さて…… これからまずは魔法の特訓ですわね」

 大臣の部屋を出て、エレーヌは長い髪をかきあげて、言った。

「あ、」

 エレーヌは何かを思い出したかのように、言った。

「そうだ。わたし大臣にヘリコプターの申請するんだった。先に行っててくれるかしら? うちの部隊は外にあるから。外に出れば彼女がいるから、わかるわ。じゃあね!」

 そう言って、足早にエレーヌはさっきの部屋に去っていった。

「……ふうむ」

 とりあえず、ミックはさきほど通った道を戻ってみることにした。

 

 

                     †

 

 

 しばらく歩いて。

「……あれ?」

 ミックは違和感に気づいて、立ち止まった。

「……おかしいな…… さっきはここをまっすぐ進んだはずだったのにな」

 そのとき、ミックにひとつの考えが浮かんだ。

 ――もしかして、迷った?

「なーにやってんの?」

「う。この声は」

 ミックは聞き覚えのある声にホッとした反面、愕然とした。

「なんで、お前がそこにいるんだ? ロマ?」

「え? それはこっちのセリフなんだけど?」

 その言葉を聞いてミックは振り返る。

 そこにいたのは、黒のブレザーを着た少女。ジーパンを履いている。ブレザーの隙間からは白いシャツが覗かせていた。

 そしてブレザーには名札がつけられていた。そこには国防省のマークと彼女の名前を示す『Roma Lifa』の文字。

 彼女の名はロマ・リーファ。

 ミックとはいとこの関係で、小さい時から兄妹のように遊んだ――らしい。

 「あ、もしかしてミック兄さんも“選ばれた”とか? 役職はなに? 私は隊長補佐官だったんだけど」

 ロマは胸を張って、言った。

「あの副隊長といい、ロマといい、部下がひどいものなのですが……」

「え?」

 ロマは眉をひそめる。

「もしかして、ミック兄さん。隊長なの?」

「ま…… 一応、だけどね」

 ミックは嫌々ながら首肯した。 

「うわー隊長って普通イケメンじゃないのー。軍の中のロマンスとか予想してたのにー! テンションガタ落ちだよー」

 ロマが下をむいて、俯いて、頬を風船のように膨らませて、言った。

「あーすいませんね。ってかお前はドラマの見すぎ。そんな展開実際ありえないから」

「そんなこと言ってるミック兄さんこそ期待してるんじゃないの? 副隊長とかお似合いだよ?」

 ロマが肩をすり寄せながら、言ってきた。

「副隊長……?」

「エレーヌさんのことだよ」

「ば、馬鹿! どうして僕があんな魔法みたいな非科学的なものを信じてる奴と!!」

 ロマとミックが話をしている。

 そのときだった。

「ミック・サフレス。 ロマ・リーファ!!」

「は、はいっ!!」

 二人は同時に振り返った。

 そこにいたのは、噂の人物。エレーヌ・マクベスだった。

「なにをしているのです? 部隊に行っておいてください、といったはずですが?」

 エレーヌは笑いながら言った。しかし“目は笑っていない”。

「すいません。迷ってしまって……」

「そうですか。じゃあ私についてきてください」

 エレーヌはそう言って、先に進んでいった。

 ミックとロマは、それについていった。

 

 

File:04 FIN

 

TO BE CONTINUED BY File:05.