第10話
ところで、カナリア村はマザーズデイの半分ほどの広さを誇っている。
そんな中を一匹のカナリアを探すのは可能だろうか?
「いや、無理だろ……」
「そんなこと言わないの。さっさとさがすわよ」
ダグラスとダイアナはそんなことを話しながら、木々の隙間の隧道を歩いていた。
「にしても広いなー。
こんなに広いならカメラでも持ってくればよかった」
「のんきな考えね。
そんなんでローラを探すことができるの?」
「できないでしょうね」
「まあ、そうよね」
「だって、むずかしいじゃないですか。
そんな簡単に言われても、一匹のカナリアを、しかも“歌う”という外見では解らない特徴の、ですよ?
無理に決まってますよ」
「そうだけど。さがすものは探すのよ」
さて、とダグラスは考える。
この、カナリア村。いったいどれほどの広さなのだろうか?
そして、人はいるのか?
そんなことを考えながら、歩くダグラスたちだった。
***
村の中心には、家があった。木でできた、古い家だ。
「こんなところに家が……?」
「入ってみましょうか?
何かあるかもしれませんし」
ダグラスはダイアナの言葉に従い、ドアをノックした。
「なんですか?」
声はすぐに聞こえてきた。
嗄れた声だった。
「あの……。
ここにカナリアのローラっていますか?
たしか歌うカナリアだってんで有名らしいんですけど……」
「あぁ、それなら、村のどこかにいるはずじゃろ?
でもあの子は放浪癖があってのう……。
もしかしたら抜け道でも使って外に出てしまったのかもしれん……」
老人は小さく、うなずきながら言った。