第6話

「よっ、兄ちゃん。

 珍しいカナリア買っていかないかい?」

 怪しげな叔父さんに足止めされてしまった。

「カナリア……?」

「そうそう。安くしとくからさっ!

 100$でどうだい?」

 正直ダグラスはカナリア――鳥全般に言えることだが――を見るのは好きだが飼うのはあまり好まなかった。彼の体質というのもあるのだろう。

「……いや、いらない……」

「タダでもいらないかね?

 今在庫処分中で、私もあまり必要としないんだよ。

 タダでいいから受け取ってくれ。

 ケージもセットであげるから」

「まぁ…… そこまで言うなら……」

 正直ダグラスはさっさとこの空間を抜け出して墓場へと向いたかった。ここで何話もかけては勿体無いのである。

 ダグラスはカナリアの子供が入った小さなケージが揺れないようにリュックの一番下に固定した。

 

 

***

 

 

「あっ、もしかして、これから墓場へ行く人かしら?」

 デパートから出ていきなり声をかけられた。

 その人間は薄い緑色のコートを着ていた。ポケットには小さなメモ帳とボールペンが入っていた。茶色い長い髪が風に吹かれて小さく靡いた。

「私の名前は、ダイアナ。

 マザーズデイに住むフリーの新聞記者よ。

 よろしくね?」

「いや、いきなりなんなんですか。

 墓場に僕が行くだなんて一言も言ってないですよ?」

「町長さんから教えてもらいました。

 そういうのは普通に公言出来ますので」

 このときダグラスは死ぬほど町長を恨んだ。そういうことは平気に言っていいものなのか、と。

「んでんで、今から行く感想は?」

 そう言ってダイアナはダグラスにマイクを向ける。

「話すつもりなんて一切ありませんよ」

 そう言ってダグラスはダイアナを軽くよけて街の南へ歩きだした。

「待ってください!

 私だって一緒に行くんですからっ!」

 ダイアナは叫びながら、大急ぎでダグラスの後を追った。