第2話


 とりあえず地下室の鍵を探さねばならない。
「地下室の鍵……、ねぇ。

 うーん。そんなの知らないしなー。

 だって、いつも『入るな』って険しい顔でママが言ってくるし」
「あら?

 私はそんなこと言ってないわよ?」
「えっ」
「ホントのことは鍵の在処がパパしか解らなかったからできなかっただけ。

 実際は入ってもいいのよ」
 キャロルはそう言ってダグラスの大好きな肉じゃがを作り始めた。
「あっ、でもパパはよくミックを可愛がってるわね。

 もしかしたらそこに何かあるかもしれないわ」
 とりあえずダグラスは犬小屋へと行ってみることにした。

 


***

 


 この時期の夕方は随分と冷え込む。風邪が大流行する理由も解るかもしれない。
 犬小屋はすぐそばにあって、なぜか二足歩行する愛犬ミックが眠っていた。
 ミックの首輪をよく見ると、鍵がかかって『UG ROOM』と書かれていた。
「UnderGround ROOM……。

 地下室の鍵ってもしかして、これ?」

 

***

 

 ダグラスは寒い体をストーブで温めてから、地下室へ行くこととした。
 地下室はキッチンのすぐ脇にある。今まであまり開けられていなかったのか鍵を開けると埃が舞った。
「けほっ」
 ダグラスは軽く咳き込んだ。それを見てキャロルが、
「大丈夫?」
 と言って背中を軽く摩った。
「うん、大丈夫」
「無理しちゃダメよ?」
「無理なんかしてないよ……。埃が入っただけ」
「わかるけど……。

 あなたは喘息持ちなんだから。

 そういうのは気を付けてね?」
「うん。わかってるよ」
 そう言ってダグラスは地下室に足を踏み入れた。

 

 

***

 


 地下室は真っ暗だった。辛うじて何があるか、解るくらいだった。
 そして、あったのは日記帳と、地図と、古いバット。
 バットがなぜ地下室にあるのか(おおよそ護身用と思われるが、なぜバットなのだろうか?)わからなかったが、ひとまず日記を開いてみることにした。
 しかし、だいぶ昔のものらしく、読み取れる部分は少なかった。
 ただ読めた場所と言えば、
『あいことば・・・

 かみのしっぽは どこにある。

 あまかけるふねの わすれもの』
「……なんじゃこりゃ?」
 とりあえずダグラスはそれを覚えておくことにした。
「ごはんよー。早く出てきなさーい」
 キャロルの声が聞こえ、ダグラスは急いで階段を駆け上がった。