02

「お前も今日は早いな。

 なに、どうしたの? 時間間違えたとか?」

 正直言おう。私はお前にそれを言う理由などない。そう思ってまた本を読み直したのだが、

「うぁーっ。

 眠いなー、今日も。

 しかし日差しのいいことだっ!」

 唐突に扉を開け放ち入ってきたのはこれまた普通の人間だった。いや、てか普通の人間しかいないんだけどね。

「よっ。タイトー」

「タイトー言うな!!

 瑞希も早いな? 明日雪降るんじゃねーの?」

 今は4月なんだけど、と冷静にツッコミを入れる。

「おいおい、考えてくれたまえよ?

 今は異常気象だ。4月に雪だって有り得ることだぜ?」

 タイトーはそんなことを言って、クールダウンさせようとか思ってるんだろうけど、無理だから。いや、ドヤ顔しても無駄だから。

 この少年の名前は大東夏希[だいとう なつき]という。だけどタイトーのほうがいいやすいのでそうしている。本人も了承してるし……いいよね?

「いや、ダメだって!」

「ダメ、なんて一言も言ってないでしょう?

 ……そういえば今日って新入生オリエンテーションだっけー?」

「そうだねぇ」タイトーは笑いながら、

「部活、何はいるんだ? 瑞希は」

「うーんと」

 そう言って適当に考えるフリをしておいた。

 この学校は、文化部、運動部ともに20ほど存在する。活発な学校だ。

 私は絵も上手くないけど、本を読むのが好きだから文芸同好会にでもはいろうかなぁ、とか思ってるけど……。

「へえ、文芸同好会ねぇ。

 意外だなぁ。ところで、文芸同好会って本を読むだけじゃなくて、原稿を書いたりするんじゃないのか?

 おまえ、小説とか書けたっけ?」

「書けるわよ。これでも趣味でかいてんのよー」

「へー。そうにはみえないけどなぁ……」

 そう言いながらタイトーはまじまじと見つめる。正直、嫌いだ。