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私はただ何も考えることもなくこの長い坂道を自転車で駆け上がっていた。
いや、何も考えてない、ってのは間違いで実際は何で自分がこんな学校を選んでしまったんだろうという焦燥感に駆られているんだけど。
私は刈屋瑞希(かりや みずき)っていう、まだ高校生になりたての15歳だ。
なんでまだ15歳かっていえば早生まれっていうだけなんだけど、皆16歳なのに自分だけまだ年上というのは誰も気にしてないしそんなことは当たり前だ。
そして坂道を登り終えた所に戸塚高専――私の通う学校の建物が見えてきた。
外から見るとまるで大学のキャンパスのような感じだった。
クリーム色の4階建ての建物、それが私の在籍するクラスのある第一教室棟ってやつだ。
高専――高等専門学校は深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする日本の学校であり、後期中等教育段階を含む、5年制(商船に関する学科は5年6カ月)の高等教育機関と位置付けられている。
一般には高専(こうせん)と略される。(w◯ki調べ)
一般には偏差値も高く、一部の人間からは『高専に入学した』ことが名誉ともなることもあるみたいだ。
教室に入って、周りを眺める。
まだ、意外と誰もいない。
そして後ろの方は……雑誌とかが乱雑に積み重なっていて兎に角汚かった。
「なんでこうなってるんだろうなぁ……」
呟きながら、私は本を開いた。
少し前にドラマ化した探偵ものだった。
大学の教授がしがない刑事から事件を聞いて解決するやつだ。
本は読んでいて楽しいし、心を癒してくれたりハラハラさせたりそして想像力を豊かにしてくれる。
私は本を読みながらその本の事件の結末をただ楽しみに読んでいたら、
「それ、犯人医者だろ」
一番聞きたくないセリフを聞いてしまった。
私の目の前に立っていたのは少し赤茶けた髪の少年。
緑のポロシャツを着て青い眼鏡をかけていた。
「よぅ、……瑞希だっけ?」
どうして彼は私のことを呼び捨てで、しかも下の名前で呼ぶのだろうか。
一応言っておくと私と彼に接点が出来たのは昨日で、しかもそれは『同じクラスのクラスメート』ってだけだ。
彼の名前は青木洋。
一番最初の出席番号の男。
それ以外には知ることもないし、あまり知ろうともは思わなかった。