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 そして、現在。

 王都の外れにラスタルという小さな山村がある。

 その村は老人ばかりが住んでおり、若者は仕事を求めて王都や他の町に行くため、いつ廃村になってもおかしくない状態であった。

 それが今は、道という道、店という店に人がごった返している。

 そして村のあちこちにはこんなチラシが貼ってあった。

 『大魔術師ライバート・ウェリンダー凱旋公演』と。

 

 

 

 そんな山村、ラスタルへと向かう田舎道を二人の男女が歩いていた。

 一人はぴっしりと整えた髪に白いポロシャツ、紺のカーディガンを着た青年だった。

 そしてもう一人は白のフリルを袖や腰などところどころに縫い付けられた漆黒のドレスを身にまとい、白のカチューシャを付けた黒髪の少女だった。

 少女は少年と同い年に見えるが、彼女自身から出る雰囲気やその大人びた服装が彼女を大人に魅せていた。

「おい。その山村とやらはまだなのですか」

 少女はその風貌とはうってかわって幼さの残る口調で言った。

「そんなこと言っても無理だよ。ロゼ」

 少年は少女――ロゼというらしい――に答える。

「それにしてもどうしてこんなに道に人が居ないのですか。

 お前がこの前調べた事に依れば道に人がいるから楽に行けると言ってたでしょう。

 それがなんですか。この状況は?

 まるで狐に摘ままれたみたいです」

「それは僕だって予想外だったんだから勘弁してくれよ」

 少年は持っていた薄い文庫本を団扇代わりに扇いだ。

「おや、見えてきたみたいだな」

 少年の言葉にロゼは反応し、小走りを始める。

「なにがもう元気がない、だよ」

 忌々しげに呟いて彼も後を追った。