ぼくらはポケモントレーナー!

 

連載:2012/06~

 

更新履歴

06/13 1~3話掲載

2012年

6月

13日

第03話

 街を歩くノゾミとコウキの二人。

 

「ここはラクラシティ。カイント地方の西の都、と呼ばれてんだ。でも君も知ってるとおり、この町から一歩出ると自然たっぷりなんだ。僕はいつも森でポケモンの情報とかを収集しているんだけどね」

 

 コウキの言葉をノゾミはメモにとる。

 

「んで、この地方は他地方と同じようにジムがあるんだ。そのジムを全て制覇した者は……」
「ポケモンリーグに、行けるのよね?」
「なんだい? 知っているのかい?」
「まぁ……。それだけなら」

 

 ノゾミは愛想笑いをして、言った。

「お前が白野望美か」

 

 突然、いきなり、後ろから声がかかった。

 

「……だれ?」

 

 ノゾミは後ろを振り返る。
 そこにいたのは、上から下まで全て黒。そんな少年がいた。
 唯一違うと言えば、その真っ黒とは真逆の真っ白な髪、だろう。

 

「……俺の名はシロト。俺は」
「お前が“なぜこの世界に来たのか”知っている」
「……え?」

 

 ノゾミはシロトの台詞を聞いて、何も反応が出来なかった。

 

「……俺が現時点で言えるのは、そこまでだ。精々、この地方で足掻くといいさ」

 

 それだけを言って、シロトは消えた。

 

「……あいつは何が言いたかったんだ?」

 

 コウキがそれを言ったと同時に、ポケギアに着信が入る。
 ポケギア……正式な名前はポケモンギア。地図、電話、ラジオ機能がついた高性能な機械だ。

 

「はい、もしもし」

 

 コウキは電話にでる。
 電話は、カツラギ博士の助手、クリノだった。

 

「コウキくん!? 今どこかしら?」
「……まだラクラですよ。どうしたんですか。語気を荒げて」
「博士の研究していたポケモンが盗まれたのよ! 犯人の特徴はわかってモンタージュを描いてもらったから今から送るわね!」

 

 同時にジーッ、という音がポケギアから聞こえる。

 紙が、ポケギアから出てきているのだ。

 

「これか」

 

 コウキは紙を手にする。

 

「な……!」

 

 コウキの表情が、凍りついた。

 

「どうしたの?」

 

 ノゾミが、それを見る。
 ノゾミも、驚いた。
 そのモンタージュに描かれていたのは、さっき会った黒ずくめのトレーナー、シロトだった。

 

 

 

つづく。

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2012年

6月

13日

第02話

 ノゾミとコウキは、まずはノゾミのポケモンを手に入れるため、研究所に向かった。
 研究所は、そのたぐいの施設の割には民家のように小さく、古いものだった。

 

「……ほんとにここなの?」

 

 ノゾミが聞き直してしまうほどだった。

 

「ここだよ? ……何、信用してないの?」

(さっき初めて会ったばかりの人のことを信じられるわけないと思うんだけどねー)

 

 ノゾミはそんなことを考えながら、コウキに連れられて中に入っていった。

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

 

 

 研究所の中は綺麗だった。
 床は白いタイル、壁一面には本棚、しかもその本棚にも本がいっぱい詰め込まれていた。

 

「うわあ……」
「遅かったな。コウキ。おや? そちらのお嬢さんは? まさかおまえのかn」

 

 奥にいた長身の男が言った。と、同時に、
 ドゴン!! と研究所にそんな音が響く。
 コウキがその男を殴った音だった。

 

「な……!! なにするコウキ!! 実の親に!!」
「オヤジ、今日何のために俺がここに来たのか分かってんだよな?」
「おう、そうだった。ポケモン図鑑のバージョンアップだったな。これで完成だ」
「カントーに住むポケモンの権威、オーキド博士と一緒につくったこのポケモン図鑑だ」

 

 男が、持っていたのは少し形は違ったものの、『ポケモン図鑑』であるのは彼女でもわかった。

「して……名前は?」
「あ、はい! 白野望美っていいます!」
「……わかった。コウキが認めたのなら、多分そういう素質があるのだろう」
「はかせ、もしかして……」
「ああ。彼女に、渡そう」
「ポケモン図鑑と、ポケモンを」

 

***

 

「え!?」

 

 ノゾミは驚いた。


「さあ、えらびたまえ」

 

 机の上には2匹のポケモンがいた。
 それぞれ、キモリ、ミズゴロウと書かれていた。

 

「え? ……ほんとうにいいんですか?」
「いいさ。息子が認めたのだ。私が口出すことはない」
「さあ、選びたまえ」

 

 ノゾミはしばらく黙って、ひとつのモンスターボールを手に取る。

 

「ほう!」
「キモリか! そいつは生きがいいぞ! 育てがいもある。さすが息子が認めたトレーナーだな!」

 

 その男は笑いながら、言った。

 

「うむ? 服装があれだな。私の娘のあるからかそうか?」
「いえ、結構です……」
「クリノくん。頼むぞ」
「わっかりましたー!」

 

 クリノはノゾミの背中を押し、どこかへ連れ去った。
 ノゾミが連れ去られたのは、小さな部屋だった。
 服がいっぱいあった。クローゼットのような場所だろう。

 

「あのー? あの人は誰なんです?」

 

 取り敢えず、服を脱ぎながら、ノゾミは聞いてみる。

 

「え? 知らないの?」
「はい…」
「あの人はカツラギ博士、この地方のポケモンを研究してる人よ。1年前にカントーに住むポケモンの権威、オーキド博士と合同でポケモン図鑑を作ったの」
「あ、そうなんですか……」
「そういうこと。はい、あなたの服装。多分サイズはこれでオッケーのはずだから」
「あ、ありがとうございます……(なんで私のサイズ知ってるんだろ……?)」

 

 ノゾミは服を受け取り、カーテンの中に入った。

 

 

 しばらくして、カーテンが開かれた。

 

「あら! 似合ってるじゃない!」

 

 クリノは笑いながら行った。

 

「そうですか……? ちょっと恥ずかしいんですけど……」
「ま、いいじゃないの♪ さ、いったいった!」

 

 クリノは強引に連れ去る。

 

「え、え、え~!!」

 

 

「……遅いなー」

 

 1階ではコウキとカツラギ博士が待っていた。

 

「女性は着替えその他もろもろが遅いものだよ」

 

 博士はコーヒーを一口、すすりながら言う。

 

「うるさいな……。母さんを捨てたくせにさ」
「……」

 

 博士は静かにコーヒーカップを置く。

 

「コウキ。あれは違う」
「違うってなんだよ!! 母さんを捨て去ったことがか!?」
「まあ、静かにしろ。もうすぐノゾミくんがくる」
「あ……。わかった」

 

 コウキは舌打ちしながら、言った。

 

「待ったかしら?」

 

 ノゾミの服装は、いたってシンプルだった。

 ハーフパンツ、シャツ、サマーセーター、帽子という軽い服装。

 

「え? それでいいの?」
「え? まあ、一応ジャンパーも持っていくけど?」
「あ、そう……。じゃあ、いいや」
「とりあえず、行きましょうか」

 

 ノゾミは、さっきと違った感じで言った。

 

「……ああ」

 

 二人は、研究所の扉を開けた。

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2012年

6月

13日

第01話

 ここは、自然と科学が点在する、カイント地方。
 ……の西の都と題される街、ラクラシティ。

 

「じゃあ、博士。ここはこのデータで良いのですか?」

 

 白衣の女性が、少し白髪混じりの髪の男に言う。

 

「ああ。クリノくん。……ところで、遅いなあ……。あいつは」
「……コウキくんですか?」

 

 助手――クリノは答えた。

 

「うむ……大丈夫だろうか」
「……博士も早く子離れしたらどうです? 多分向こうはもう親離れしたがってるかもしれませんよ」

 

 クリノは机の上の大量の書類を片付けながら言った。

 

「ハハハ。そうかもな、14にもなれば、勝手に子供は親離れするものだな」

 

 博士、は腰を叩き「さて、もう一仕事。彼が来るまでここを片付けねば。また何か言われてしまう」と言った。

 

***

 

 話は変わり、ラクラシティそばの森。
 豊富な水資源があり、ラクラシティのまわりには自然が豊かに広がっている。
 故に、ラクラシティは『自然と 人工が 混ざり合う街』と言われているほどだ。

 

「なんなのよーっ!!」

 

 そこに、ひとりの少女が森の中を駆け回っている。
 その服装は全身ジャージでここをもとから走るための服装でない、ことがすぐわかる。

 

「な、なんでこんなとこ……はしんなきゃいけないのよー!!」

 

 彼女の後ろから、大量の虫が追ってきている。
 30cmほどの大きさの緑色の虫。それが40匹以上も襲ってくるのだ。想像しただけで寒気がするだろう。

 

「なんで……キャタピーがあんな大きいのよ!! ……てか、なんでキャタピーがこんなところにいるのよ!!」

 

 どうやら、あの虫の名前はキャタピーというらしい。

 

「あ……!!」

 

 目の前には、少年が一人。

 

「ちょっ……!! よけて!!」

 

 少女は力の限り、叫んだ。

 

***

 

 少年は、森にいた。理由としては精神統一をしていたのだ。

 

「……さて、そろそろ行かなきゃ、オヤジに怒られるな」

 

 と、少年が立ち去ろうとしたとき、

 

「よけて!!」

 

 森の奥から声が聞こえた。

 

「あ?」

 

 声のした方を見ると女の子がキャタピーの大軍に追われていた。

 

「……なんじゃありゃ?」

「とりあえず……助けなくちゃな」

「行けっ! アチャモ!」

 

 少年はボールを投げると、またたく間にそのボールは大きくなり、ボールがまっぷたつになり、そこから何かが出てきた。
 アチャモ、というらしい。

 

「アチャモ!! 『ひのこ』!」

「チャモッ!」

 

 アチャモ、と呼ばれたものは口から火を噴く。

 

「あ、アチャモ!?」

 

 何より、驚いたのは、少女だった。
 少年のもつアチャモが放ったひのこにより、キャタピーの大群は逃げていった。

 

「ふう……。助かったァ」

 

 少女はへなへなと崩れる。

 

「一体何やってるんだ? 君もポケモントレーナーならポケモンを出せばいいのに……」
「え? 今『ポケモン』って言った?」
「ああ。言ったよ。君もポケモントレーナーなんだろう? 見たからして、僕と同い年くらいだし」
「いや、私はポケモンを持ってない……ここは、カントー地方かしら?」

 

 少女は自分の中にある“ゲームの”知識から探して、言った。

 

「カントー? カントーはこっから遠い海の向こうだよ」

「じゃあ、ホウエン? シンオウ? イッシュ?」
「君が何言いたいのかわかんないけど……ここはカイント地方だよ」
「か、カイント地方?」

 

 少女は、まさかの回答に驚く。
 カイント、なんて地方は聞いたこともない。

 

「ま、ポケモンもらってなくてここを歩くなんて自殺行為だよ。そうだ! 君もオヤジ……博士からポケモンをもらえばいい! 行くよ!」

 

 少年は少女の手を引っ張り、言った。
 少年は走る。それにつられて少女も走る。

 

「ちょっと、あなた、名前は?」

 

 少女は聞く。

 

「僕? 僕はコウキ! 君の名は?」

「……私はノゾミ」

「ノゾミちゃんか! よろしくね!」

 これが、大きな冒険の始まりだとは……、
 まだ誰も気づかなかったのだった。

 

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