01

 

 漆黒の闇が街を包み込む。

 それを切り裂くように、槍が世界を一閃する。

 大地が唸りを上げ、彼女はまた攻撃を開始する。

 異形が槍に突かれ、ゆっくりと倒れていき、その奇妙な空間は本を閉じるように終わりを告げる。

 彼女はそれを見下ろし、息を吐くように黒板消しを胸に押し込む。

 キラリと輝いたそれは胸に収納され、彼女は普段の姿――パーカーにジーパンという非常にラフな格好だ――になる。

 そして、それを見ていたように別の少女がそばに現れる。

 

「よう、どうしたんだい。陽香?」

「……ちょっと気になっただけ」

 

 そして、陽香と呼ばれた少女は帰っていく。

 

「……変な奴」

 

 そうつぶやいて、彼女はその陽香が帰っていった方向と逆に歩いていった。

 

 

 彼女は大蔵杏、槍を使う黒板厨だ。

 

 

 

 

 

 


 彼女が黒板厨となったのは、彼女の父親のためである。

 それを多くは語ることもないだろうし、語らなくてもいい。

 彼女が最近気に入らないことは、新入りとなる黒板厨蓮野陽香についてだ。
 蓮野陽香はここ最近黒板厨となった人間だ。

 しかし、杏にとって陽香がどういう存在なのかも解らない。以前剣を交わしたことはあるが、それでもいけ好かないというか気が合わないと杏自身思っていた。