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漆黒の闇が街を包み込む。
それを切り裂くように、槍が世界を一閃する。
大地が唸りを上げ、彼女はまた攻撃を開始する。
異形が槍に突かれ、ゆっくりと倒れていき、その奇妙な空間は本を閉じるように終わりを告げる。
彼女はそれを見下ろし、息を吐くように黒板消しを胸に押し込む。
キラリと輝いたそれは胸に収納され、彼女は普段の姿――パーカーにジーパンという非常にラフな格好だ――になる。
そして、それを見ていたように別の少女がそばに現れる。
「よう、どうしたんだい。陽香?」
「……ちょっと気になっただけ」
そして、陽香と呼ばれた少女は帰っていく。
「……変な奴」
そうつぶやいて、彼女はその陽香が帰っていった方向と逆に歩いていった。
彼女は大蔵杏、槍を使う黒板厨だ。
*
彼女が黒板厨となったのは、彼女の父親のためである。
それを多くは語ることもないだろうし、語らなくてもいい。
彼女が最近気に入らないことは、新入りとなる黒板厨蓮野陽香についてだ。
蓮野陽香はここ最近黒板厨となった人間だ。
しかし、杏にとって陽香がどういう存在なのかも解らない。以前剣を交わしたことはあるが、それでもいけ好かないというか気が合わないと杏自身思っていた。