ノゾミとコウキは、まずはノゾミのポケモンを手に入れるため、研究所に向かった。
研究所は、そのたぐいの施設の割には民家のように小さく、古いものだった。
「……ほんとにここなの?」
ノゾミが聞き直してしまうほどだった。
「ここだよ? ……何、信用してないの?」
(さっき初めて会ったばかりの人のことを信じられるわけないと思うんだけどねー)
ノゾミはそんなことを考えながら、コウキに連れられて中に入っていった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
研究所の中は綺麗だった。
床は白いタイル、壁一面には本棚、しかもその本棚にも本がいっぱい詰め込まれていた。
「うわあ……」
「遅かったな。コウキ。おや? そちらのお嬢さんは? まさかおまえのかn」
奥にいた長身の男が言った。と、同時に、
ドゴン!! と研究所にそんな音が響く。
コウキがその男を殴った音だった。
「な……!! なにするコウキ!! 実の親に!!」
「オヤジ、今日何のために俺がここに来たのか分かってんだよな?」
「おう、そうだった。ポケモン図鑑のバージョンアップだったな。これで完成だ」
「カントーに住むポケモンの権威、オーキド博士と一緒につくったこのポケモン図鑑だ」
男が、持っていたのは少し形は違ったものの、『ポケモン図鑑』であるのは彼女でもわかった。
「して……名前は?」
「あ、はい! 白野望美っていいます!」
「……わかった。コウキが認めたのなら、多分そういう素質があるのだろう」
「はかせ、もしかして……」
「ああ。彼女に、渡そう」
「ポケモン図鑑と、ポケモンを」
***
「え!?」
ノゾミは驚いた。
「さあ、えらびたまえ」
机の上には2匹のポケモンがいた。
それぞれ、キモリ、ミズゴロウと書かれていた。
「え? ……ほんとうにいいんですか?」
「いいさ。息子が認めたのだ。私が口出すことはない」
「さあ、選びたまえ」
ノゾミはしばらく黙って、ひとつのモンスターボールを手に取る。
「ほう!」
「キモリか! そいつは生きがいいぞ! 育てがいもある。さすが息子が認めたトレーナーだな!」
その男は笑いながら、言った。
「うむ? 服装があれだな。私の娘のあるからかそうか?」
「いえ、結構です……」
「クリノくん。頼むぞ」
「わっかりましたー!」
クリノはノゾミの背中を押し、どこかへ連れ去った。
ノゾミが連れ去られたのは、小さな部屋だった。
服がいっぱいあった。クローゼットのような場所だろう。
「あのー? あの人は誰なんです?」
取り敢えず、服を脱ぎながら、ノゾミは聞いてみる。
「え? 知らないの?」
「はい…」
「あの人はカツラギ博士、この地方のポケモンを研究してる人よ。1年前にカントーに住むポケモンの権威、オーキド博士と合同でポケモン図鑑を作ったの」
「あ、そうなんですか……」
「そういうこと。はい、あなたの服装。多分サイズはこれでオッケーのはずだから」
「あ、ありがとうございます……(なんで私のサイズ知ってるんだろ……?)」
ノゾミは服を受け取り、カーテンの中に入った。
しばらくして、カーテンが開かれた。
「あら! 似合ってるじゃない!」
クリノは笑いながら行った。
「そうですか……? ちょっと恥ずかしいんですけど……」
「ま、いいじゃないの♪ さ、いったいった!」
クリノは強引に連れ去る。
「え、え、え~!!」
「……遅いなー」
1階ではコウキとカツラギ博士が待っていた。
「女性は着替えその他もろもろが遅いものだよ」
博士はコーヒーを一口、すすりながら言う。
「うるさいな……。母さんを捨てたくせにさ」
「……」
博士は静かにコーヒーカップを置く。
「コウキ。あれは違う」
「違うってなんだよ!! 母さんを捨て去ったことがか!?」
「まあ、静かにしろ。もうすぐノゾミくんがくる」
「あ……。わかった」
コウキは舌打ちしながら、言った。
「待ったかしら?」
ノゾミの服装は、いたってシンプルだった。
ハーフパンツ、シャツ、サマーセーター、帽子という軽い服装。
「え? それでいいの?」
「え? まあ、一応ジャンパーも持っていくけど?」
「あ、そう……。じゃあ、いいや」
「とりあえず、行きましょうか」
ノゾミは、さっきと違った感じで言った。
「……ああ」
二人は、研究所の扉を開けた。
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